彼の大好きだという浜辺へ行った。
そこは本当にキレイで今でもはっきり覚えている。

私の視界で切り取られてしまうのが
本当にもったいなくて
どこまでも続く海岸線を見つめながら
どういうつもりで私をここに連れてきたんだろうと
彼の気持ちを探ってみたりした。

この景色を彼と一緒に見るのは
これが最初で最後になるんだろうなあ・・。

こうしている間にも時間は容赦なく過ぎていく。
もう帰らないと・・・。
旦那に対しての気遣いじゃない、
これ以上ここにいたら私は彼から離れられなくなる。
私を好きではないかも知れないこの彼なのに
どんどん惹かれはじめている。

今度は彼が私を見送る番。
何度も振り返るけどそこに彼はいない。
自分の自意識過剰さにおかしくなりながら
振り切るように新幹線に乗った。

遠くなる夜景が 街の匂いが
少しずつ薄くなってくるころに電話が鳴った。

「ちゃんと乗った?」
彼からだ。
もしかして今ホームに・・・?
急いで席を立ったけどすでに新幹線は発車している。

また自分が思い上がっているだけだと知り、少し笑った。

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