最初からわかっていたはず。
何度も言われていたはず。
覚悟は出来ていたはず、だった。

一緒に買ったお揃いのパジャマからは
かすかに彼の香りがした。
もう一度強く抱きしめた荷物から
小さな紙切れがはらり、と落ちた。

彼の、字だ。

小さな紙切れいっぱいに書かれたえんぴつ書き。
怖くて中は読めなかった。
ただ「ありがとう」の文字だけが見えて
本当に終わってしまったんだと実感して
治まったはずの涙がまた溢れてきた。

いつだったか彼とした話の中で
「さよなら」は最後のお別れの言葉だよね、と
そう、言ったことがある。
私はあえて普段の別れ間際の言葉にも
「さよなら」はおろか「バイバイ」も使わなかった。
彼の走り書きのメモの中に
「さよなら」の文字がないことを知った私は
もしかしたら・・・
と、小さな賭けをしていた。

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